前回の記事で、私のトレード利益が専業トレーダーになってから右肩下がりであることに関し、その要因として「外部要因」と「内部要因」があり、2つの外部要因について書きました。その2つは、相場の「値動きの変化」と、スプレッドや口座凍結などの「トレード環境の変化」です。

今回は、私自身の考え方である5つの「内部要因」の変化について書きました。FX歴が20年を超えてきたので、心境の変化をまとめておきます。

1.リスクを知った

FXで勝ち始めて軌道に乗り始めたころは、自分がどれだけ危ないことをやっているのか、正直なところ深く理解していませんでした。

もちろん当時の自分には自信がありましたし、実際に勝てていたのも事実です。「今しかない」「リスクを取って何億も稼ぐフェーズ」と本気で思っていました。「大ロットで爆益を取りにいき、短期間で一気にFIREまで持っていく」。そういったパフォーマンス重視のトレードをしていたのです。

しかし、外部要因の壁にあたり、同じことをやっていても勝てないのだと実感しました。2015年の9月あたりで、連敗してメンタルが崩壊した時に思ったのを覚えています。これまでは、負けてもその日のうちにすぐに取り返せたのに、それができなくなったのです。

今のペースでロットを上げていくと、負けた時の損失が極めて大きくなると恐怖心がめばえました。これまでサクサク勝ってきたものの、やっていることは超ハイリスクな投機トレードだったのです。相場環境の変化、スプレッド拡大や口座凍結などの外部要因の変化で、リスクに気付きました。

逆張りスキャルピング手法1本では、今後もロットを上げて勝ち続けるのは難しいと考えたのです。手法が通用しなくなるのではなく、「たった一つの手法だけ」に頼るのが危ないと思ったのです。逆張りスキャルピングをしつつ、外部要因で触れた他の5つの手法を構築し、FXの中でも分散していきました。

リスクを顧みず、2016年以降もそれまでと同じような大ロットでパフォーマンス重視のトレードを続けていたら、どこかで大損して退場していると思います。

2.年齢・生活スタイルの変化

次に大きかったのは、年齢と生活スタイルの変化です。
FXを始めたころは、独身で、時間も金もすべて自分のものでした。どんなトレードをしようが、誰にも文句を言われることはなく、好きなようにできました。しかし、今はトレードを行なう前提条件がまったく違います。現在は妻と子供2人がいて、トレードの利益だけで生計を立てなければなりません。

これがどれだけリスキーでプレッシャーになるかは、経験してようやく理解できました。「トレードで退場しても再就職すればいい」という感覚は、自然と薄れていきました。専業トレーダーになった時は、30代前半ですから、職歴的にもまだまだ就職できると思っていました。しかし、30代後半になり、40歳を超えてトレーダーというほぼ無職の空白期間があると、さすがに再就職は無理でしょう。

そうなると、リスクの取り方も必然的に変わります。リスキーだけど短期で爆益が可能なフルレバレッジのスキャルピングよりも、長く続けられるトレードのほうが重要になるのは、ごく自然な流れだと思っています。

また、トレードで一喜一憂している姿を、子どもに見せたくないという気持ちもあります。少し情けないですが、トレードは感情がむき出しになるので仕方ないと思います。感情的にならないには、ロットを落とすしかなかったのです。

3.アセットアロケーションの構築

以前は、すべての資産をFXに突っ込んでいました。トレードの損益で人生が決まってしまう、まさに「FX一点突破」のスタイルだったのです。前述の心境や外部要因の変化で、スキャルピング一本では危険だと思い、他の投資分野もやっていかなければならない考えになりました。

FX以外の投資で自分にできることは何か考えた時、前職の不動産の経験を生かすことでした。J-REITの運用会社にいたので、知識と実務経験はあり、不動産投資しても大きな失敗はないと考えたのです。「最初からやっていれば良かったのでは?」と思うかもしれませんが、FX一点突破の頃は、すべての興味はFXにあり、会社を辞めてしまうほど不動産に対する興味は失せていたのです。「自分が成功するのはFXだ」という意気込みでした。

不動産投資も、やりたくてやったのではなく、FX1本では危険だからリスク分散のために、仕方なく重い腰を上げてスタートした、という感じです。2018年にようやく1棟目を取得し、現在は資産のほとんどが不動産で、9棟まで増やしています(資産価値は14億円位)。

また、新NISAふくめ株式投資も始めています。

これにより、安定した賃料収入と配当収入が入るようになりました。裏を返せば、FXで無茶なトレードをする必要がなくなった、とも言えます。生活費のためにトレードで絶対に勝つ必要がないというのは非常に大きい変化です。「今月勝たないとヤバい」という状態では、とてつもないプレッシャーがかかり、どうしても判断を誤ります。

今は、勝っても負けても生活そのものは揺らがない状態です。だからこそ、FXはエントリーが厳選され、ロットは自然と抑えられます。結果として、爆益は出なくなりましたが、大損やメンタルを崩すこともなくなりました。

4.変動そのものは珍しくない

FX収支は大きく上下しやすく、安定して年単位で最高利益を更新し続けるのは、かなり難しいです。そうなれば利益は右肩上がりになり、理想的なトレード人生といえるでしょう。

しかし、FXは不安定極まりない市場です。年間収支は良い年もあれば悪いこともあり、前年度を下回るなんてことはザラです。何十年と継続すれば、年間収支はデコボコになるのが普通であり、私の場合は、きれいな右肩下がりになっているから勝てなくなったと見えるかもしれません(下記グラフ参考)。

逆に、2010年から見ると累計利益は大きいという見方もできます。着実に利益を積み重ね、15年で累計利益は1.7億円を超えるまできました。年によって多い少ないはあるにしても、大きく負けることがなければ、この先何十年とトレードを継続すれば累計利益は蓄積していきます。

ひとたび勝てるようになれば、「一生涯右肩上がりで短期間で利益を出せる」という理想だけが先走りしてはいけません。変動そのものは珍しくないのです。

とはいえ、1年間を通して「利益ゼロ」の年が何年も続くと、FXをやっている意味がありません。「このまま勝てなくなるのか」という不安もわいてくるでしょうし、メンタルへの影響は大きいでしょう。ですから、少ないにしても年間利益は「ある程度プラス」にしなければなりません。

5.継続できる投資が大切

今の私は、かつてのような「全財産フルレバレッジ」の一点突破トレードはやっていません。短期の爆益はなくなりましたが、その分、継続性は高まっています。

利益が伸び悩んでいるように見えるのは、無理をしなくなった結果であり、リスキーなトレードをする必要がなくなった、むしろ健全な状態だと思っています。FX以外のアセットアロケーションを組み、ポートフォリオも上手く構築できているからです。

FXでリスクをとって爆益を得る姿は、SNSではたしかにカッコいいです。しかし、失敗する可能性も高まります。承認欲求に固執してしまうと、無茶なトレードをせざるを得なくなり、いずれ化けの皮が剝がれることになります。FXは短距離走ではなく、長距離走です。途中で転ばないことが大切であり、ゆっくりでも前に進み続けることが大前提です。目立たなくていいので、止まらずに継続していきます。

6.まとめ

外部要因と内部要因があり、その中でも様々なことが絡み合い、その日のトレードにつながります。1日の積み重ねがひと月になり、やがて年間の収支になります。勝っている、もしくは負けている収支だけを見て、その理由を一言であらわすことはできません。自分にしか分からない、いくつかの要因があるはずです。

みなさんも、トレード損益に影響する、もしくは影響したと思われる「外部要因」と「内部要因」を書き出してみてください。勝ちも負けも、必ずいくつもの要因が絡み合っています。それらを書き出すことが自己分析になり、FXを継続するなら必要な作業になるはずです。

私のFX利益は右肩下がりですが、総資産は着実に増えています。2015年の総資産が1億円ちょいで、10年後の今はその10倍以上になっています。トレード収益は減っても他の運用で資産は増加しているのです。FXだけ切り取ると「退化」に見えますが、運用フェーズの変化だと捉えています。

理想と現実のギャップは必ずあります。
短期的な理想だけを追い求めるのではなく、長期的な目線で、必要なことを無理なく淡々と続けることが大切だと思います。地に足の着いた投資家人生を送りたいものです。