FXでは、相場の流れが変わるとき、チャートが特徴的なパターンを形成します。ヘッドアンドショルダーは、そうしたチャートパターンの一つで、具体的に次の場面でよく見られる形です。
・トレンドが終了するとき
・トレンドへ回帰するとき
ヘッドアンドショルダーは、トレンド反転型と言われます。しかし、トレンドが始まるところでも見られる形です。使い方しだいでどちらの場面でも活用できるため、ヘッドアンドショルダーを理解すると、トレードチャンスが急増します。さらに、この2つのポイントでは、売りと買いのバランスが崩れて相場の流れが出やすい箇所で、大きな利益を得られる場面です。
重要なトレードポイントになるので、具体的な使い方も説明します。ぜひ、ヘッドアンドショルダーの使い方を覚えてください。
1.ヘッドアンドショルダーとは
その名の通り、ヘッド(頭)とショルダー(両肩)のように見えるチャートパターンです。
下図を見てください。
ヘッドとショルダーがあり、ネック(首)を結んだ線がネックラインです。右ショルダーのあとネックラインを下抜けると、ヘッドアンドショルダーの完成です。ヘッドアンドショルダーズや、三尊ともいわれます。
ネックラインを下抜けるまで、たとえば、ヘッドや右ショルダーを形成している最中は、ヘッドアンドショルダーになる可能性はあっても、まだ完成ではありませんので、ご注意ください。
1.1. 天底圏で見られるチャートパターン
ヘッドアンドショルダーは、相場の天井圏で形成されます。一方、底値圏で形成されるのが、ヘッドアンドショルダーボトムです。ヘッドアンドショルダーズボトムや逆三尊とも言います。
下図を見てください。
人間が上下逆さまになったものとして捉えてください。
「左ショルダー → ヘッド → 右ショルダー」の順番で形成され、ネックラインを上抜けると、ヘッドアンドショルダーボトムの完成です。
このように、ヘッドアンドショルダー(ボトム)は、相場の天底圏で形成され、ネックラインをブレイクすると相場の反転を示唆します。上昇トレンドが発生しているとき、ヘッドアンドショルダーが形成され、ネックラインを下抜けると上昇トレンドが終了すると理解してください。
ただし、上昇トレンドからいきなり下降トレンドになるわけではありません。ヘッドアンドショルダーが完成すると、上昇トレンドがひとまず終わっただけです。そのあとは、小休止を挟み、再度上昇トレンドになるか、それともレンジか下降トレンドかは分かりません。相場しだいです。
「ヘッドアンドショルダーが完成すると上昇トレンドが一服する」と理解してください。これが基本です。そして、トレードで利益を上げるには、「ヘッドアンドショルダー完成後の見極め」がとても重要です。上述のように、トレンド回帰するときにも活用できますので、詳しくは後述します。
1.2. 形成される理由
ヘッドアンドショルダーは頻繁に形成されますが、それなりに理由があります。完成までのプロセスを理解しておけば、深いチャート分析が可能になります。
下図は、ユーロ/米ドルの30分足です。
ABと、2つのヘッドアンドショルダーがあります。
ヘッドアンドショルダーができる理由を一言でいうと、「右ショルダーが高値を更新できなかったから」です。
Bを見てください。左ショルダーとヘッドしかできていない時は、ヘッドアンドショルダーができるなど分かりませんね。左ショルダーの高値を更新したときにヘッドができ、そのあとさらに高値更新すれば、右ショルダーではなく普通の上昇トレンドです。
ヘッドの高値を更新できず、下落するから右ショルダーが形成されます。右ショルダーができるのは、買いが弱まったからです。高値の切り下げということですね。そして、直近の安値がネックラインだと分かります。
このように、ヘッドアンドショルダーが形成されるか否かの重要ポイントは、右ショルダーです。リアルタイムでチャートを見ているときは、右ショルダーがどのように形成されるかを意識すると、効率よくチャート分析ができます。意識して見るようにしてください。
1.3. どの時間足でもできる
ヘッドアンドショルダー(ボトム)は、どの時間軸でも出現します。次のチャートは1分足ですが、上位足と見方は同じです。
1分足なので、短期下降トレンドが発生しました。
2時間で90pipsほど下落しました。底値圏では、ヘッドアンドショルダーボトムが形成され、一時的に反転していますね。右ショルダーができたということは、売りが弱まりヘッドである安値を更新できなかったからです。そして、ネックラインを上抜け、短期下降トレンドが小休止しました。そのあとは、下降トレンド回帰しています。
一時的に反転する場面で出現することがわかりますね。どの時間軸でも見方は同じなので、スキャルピングやデイトレードなど全てのトレードスタイルで活用できます。
2.ネックラインが極めて重要
ヘッドアンドショルダーで重要なことは、形成されたあとに、どうトレードするかです。ですから、ヘッドアンドショルダーを認識するだけでは意味がありません。ヘッドアンドショルダーを使って、エントリーからイグジットまでのプロセスまでしっかりイメージできなければなりません。
そこで大切なのが、「ネックラインをいかに認識できるか」なのです。
2.1. ネックラインをブレイクした方向へ進む
実際にトレードしていると、ヘッドアンドショルダーが認識できるのは、右ショルダーができ始めてからです。左ショルダーとヘッドができたとしても、右ショルダーがないと高値を更新しているようにしか見えません。
そして、ネックラインを下へブレイクすると確信できます。実際に、ヘッドアンドショルダーが形成されそうな場面があったら、最後まで監視してみてください。ここでは、次のチャートで説明します。
ネックラインを下抜けると、相場の流れは上方向から下に変ります。価格がネックラインより上にあるときは、右ショルダーを形成せず、さらに上昇する可能性があります。しかし、直近の安値にあたるネックラインを下抜けると、上昇が否定されますからガラリと流れは変わります。
つまり、ネックラインは「相場が次の局面に移行する」節目になるのです。このような相場が変わるポイントを認識できれば、適切な戦略が立てられるでしょう。ネックラインさえ引くことができれば、相場の節目が認識できます。
実は、トレードしていると、チャートパターンは複雑な形が多く、綺麗なショルダーとヘッドはそう多くありません。ヘッドアンドショルダーは多く出現しますが、誰が見ても、これはヘッドアンドショルダーだ、という綺麗な形はあまり無いです。
ただし、ネックラインは明確に分かります。なぜなら、ネック(首)は、何度か反発している直近の安値で、下抜けさせない買い圧力が働いている箇所だからです。何度か反発しているためネックラインが引けるので、まずは、ネックラインを見つけるようにしましょう。そこがトレードポイントになります。
上述のように、ネックラインを下抜けると、買い圧力の一時的な負けですから上昇は止まります。ただし、すぐに下降トレンドになるのではなく、レンジに移行するかもしれませんし、押し目になるための下落かもしれません。どちらにしても、ネックラインを下抜けると下方向へ進みます。ですから、ネックラインを見つけることが重要なのです。
なお、ネックラインの使い方は、次の記事でも説明しています。ヘッドアンドショルダーに限らず、ネックラインは全てのチャート分析に共通する見方なので、参考にしてください。
2.2. 利益確定はネックラインから2倍の値幅
ネックラインを下抜けると、ヘッドアンドショルダーの完成です。重要なのは下抜けたあとです。どこまで下げるか気になりますね。目安となる見方は、「2倍の値幅を取る」方法です。
下図を見てください(一つ前のチャートと同じです)。
どちらも、Aの値幅がヘッドアンドショルダーです。ネックラインを下抜けると、2倍の値幅が出るのが基本です。「A=Bの値幅」になります。Aのヘッドからネックラインの値幅を、ネックラインからその値幅分だけ下げると算出できます。基本として覚えておきましょう。
かりに、ヘッドアンドショルダーができたにもかかわらず、Bで2倍の値幅を出さずにさらに上昇していった場合、浅い押し目になりますから、買い圧力がかなり強いと分かります。2倍という基本があるからこそ、そうならなったときに売りと買いのバランスが崩れていると分かり、その後の相場で戦略が立てやすくなります。
トレードは、とにかく基本に忠実であることが原則です。
基本通りの値動きならトレードしやすいです。逆に、複雑な値動きであっても「基本とは違うな」と認識できれば、トレードするうえで注意できますね。基本を覚えてしまえばいいわけです。
2.3. ネックとショルダーはチャネルで斜めに取る
これまでのショルダーとネックは、水平で見てきました。特に、節目となるネックラインは全て水平ラインでしたね。人が普通に立っているイメージです。そして、トレードで利益を上げたいなら、斜めのヘッドアンドショルダーを認識できるようにしましょう。
下図を見てください。
水平でも認識できますが、このようにショルダーとネックラインを斜めに引くと、チャートから多くの情報を引き出せるようになります。いつも水平に引いていると、同じ価格帯で反応している(真横の)節目しか見つけることができません。
しかし、相場は斜めに動きます。その証拠に、トレンドラインは斜めに引きますよね。それは、高値や安値が斜めに「切り上げる」「切り下げる」からです。ショルダーとネックラインも、引き方はトレンドラインと同じ要領で、高値と安値の切り上げ/切り下げです。ですから、斜めに引くのは自然なことです。
ちなみに、チャネルラインを使うと便利です。ショルダーとネックラインが同時に、同じ角度で引けますので、そのヘッドアンドショルダーの角度がよく分かります。トレンドが発生したとき、斜めのショルダーとネックラインが把握できれば、トレードでかなり有利になります。
3.ヘッドアンドショルダーの注意点3つ
次に、ヘッドアンドショルダーの注意点を3つ紹介します。メリットだけでなく、デメリットもありますので、合わせて覚えておきましょう。注意点をおさえておけば、どう使えばいいのか、より明確になります。
下図のチャートで、ABCのヘッドアンドショルダーを見ながら順番に説明します。
3.1. ダマシが頻出するので注意
ヘッドアンドショルダーが形成されると、必ず下げるわけではありません。買いが強い場合、ネックラインを下抜けてもすぐに上昇トレンド回帰します。Aでは、ネックラインを下抜けてヘッドアンドショルダーが完成しました。
しかし、下げると見せかけてネックラインの内側に戻っています。もし、ネックラインを下抜けたとき売りポジションを持ったら、損切りしなければなりません。また、Bのように、ネックラインを下抜けることなく反発し、そこからヘッドを上抜けて高値更新することもあります。
このように、ヘッドアンドショルダーが完成しても(完成しそうでも)、ダマシとなって上昇する場合があるので注意が必要です。ネックラインを下へブレイクすると、確かに下落する可能性が高くなりますが、絶対ではないということです。ただ、ダマシだと気付ければいいわけで、ネックラインをしっかり認識できていればすぐに立て直しができるので問題ありません(トレード方法は後述)。
3.2. 天底をねらおうとしないこと
ヘッドや右ショルダーの天井でショートし、そのあとネックラインを下抜けてヘッドアンドショルダーが完成すると、かなりの利幅が取れます。ヘッドアンドショルダーが完成する前にショートしていますから、有利なポジションになるでしょう。
しかし、天底でポジションを持つのは、かなり難しいです。なぜかというと、ヘッドアンドショルダーが完成するまでは、単なる逆張りになるからです。ネックラインを下抜け、ようやくヘッドアンドショルダーが完成して安値を切り下げます。そこで買いが一服したとわかるのであり、完成するまでは安値を切り下げていません。
Bを見てください。
ヘッドや右ショルダーでショートしてれば、ネックラインを下抜けるのを待てばいいような気がします。実際には、ネックラインを下抜けず、そのまま上昇していきました。ネックラインを下抜けていないので、安値を切り下げていません。
上昇トレンドのとき、安値を切り下げる前にショートするは、完全な逆張りです。ですから、天底圏でヘッドアンドショルダー(ボトム)の完成を見越して早期エントリーするのは、リスクが高いので注意しましょう。
3.3. 片方のショルダーがないパターン
ヘッドアンドショルダーは、必ずしも左右のショルダーとヘッドが綺麗にそろうわけではありません。Cのように、右ショルダーがない場合もあります。こうなると、ヘッドアンドショルダーというよりも「ダブルトップ」になりますね。ただ、ネックラインの引き方や使い方は同じなので、私はショルダーの有無は深く考えておらず、重要視していません。
なぜCで右ショルダーがないかというと、ヘッドが出来たあと買い圧力が急激に弱まったからです。徐々に高値を切り下げるのではなく、突然売りが強くなったと言えます。しかし、ネックラインはありますから、右ショルダーがないからといって、ネックラインが使えないわけではありません。Cは、ヘッドアンドショルダーではなくダブルトップに見えるというだけです。
いつもヘッドアンドショルダーを見つけようとすると、Cのようにショルダーが無い場合に迷ってしまいます。ですから、チャートパターンの名称にはこだわらず、ネックラインの有無をチェックしてください。ネックラインが見つけられれば、問題ありません。
4.ヘッドアンドショルダーの使い方
ヘッドアンドショルダーの具体的な使い方を見ていきます。チャートパターン全般に言えることですが、ネックラインは節目で相場の流れが変わるポイントなので、ロングとショートどちらでもエントリーできます。また、時間軸や他のテクニカル分析を組み合わせると、多くのトレード戦略を立てることが可能です。
その中でも、シンプルで、かつ信頼度が高い使い方を紹介します。
4.1. 順張りで使うと信頼度が急増する
ヘッドアンドショルダーは、相場の流れが変わるときに出現するチャートパターンでしたね。上昇トレンドが発生している場合、トレンドが一時的に終了するときに形成されます。ですから、逆張りに使えそうな気がします。上昇トレンドが反転して下落するときに、ショートポジションを持つトレードです。
しかし、天底圏で逆張りのトレードが多くなってしまい、トレンドに逆らうことになります。スキャルピングなどの超短期売買を除き、「FXの基本はトレンドフォロー」です。トレンドに逆らう逆張り手法は、利幅よりも損切り幅の方が大きくなりがちで、長期的に勝てる戦略ではありません。
そこで、ヘッドアンドショルダーを「順張り」で「トレンド回帰する」場面で使うと、信頼度が急激に上がります。この記事の最初に、ヘッドアンドショルダーが出現する場面は2つあると言いました。2つは、「トレンドが終了するとき」「トレンドへ回帰するとき」でしたね。この、後者である「トレンド回帰するとき」の見方です。
下図を見てください。
下降トレンドが出ているユーロ/米ドルの15分足です。
下降トレンドは、一方向へ下落し続けることはありません。必ず、安値を更新したら戻りを付け、そのあと下降トレンド回帰してさらに安値を更新していきます。なぜ戻りをつけるかというと、安値を更新すると売りポジションを持っているトレーダーが利益確定をするため、買いが入るからです。
また、戻りを狙った新規の買いも入るので、どちらにしてもある程度下げると一時的に上昇します。
ヘッドアンドショルダーは、戻りを付けてからトレンド回帰するとき、形成されます。チャートのABCでは、戻り局面から下落するとき、ヘッドアンドショルダーが完成していますね。Aは右ショルダーがないのでダブルトップのようになっています。
しかし、ネックラインが明確なので、ショルダーの有無は考えなくていいでしょう。それよりも、「ネックラインを下抜けてから一気に安値を更新している」ことに注目してください。
上昇トレンドの天井圏でヘッドアンドショルダーを活用するのではなく、下降トレンドの戻り場面で活用するということです。こうすれば、トレンドフォローのトレードができますから、利幅が稼ぐことができるのです。ABCどれも、ヘッドとネックラインの2倍の値幅どころか、3倍4倍の値幅が出ています。
このように、下降トレンドの戻り局面でヘッドアンドショルダーが形成されたとき、ネックラインの下抜けでトレンド回帰するパターンはかなり活用できます。つまり、トレンドフォローで使うのです。上昇トレンドのときは、逆に読み替えてください。押し目ができたときにヘッドアンドショルダーズボトムが形成され、ネックラインを上抜けると、上昇トレンド回帰していくイメージです。
4.2. エントリーはヘッドアンドショルダー形成後
ヘッドアンドショルダーを発見できれば、それだけでエントリーできるため、利益に直結します。私も、毎日ヘッドアンドショルダーを見つけて戦略を立てるようにしています。それほど、信頼度の高いチャートパターンです。しかし、エントリーしたいがために、無理矢理ヘッドアンドショルダーに見てしまうのが人間の欲です。都合よくチャートを解釈してしまうのですね。
これでは、ヘッドアンドショルダーが形成される前に、ネックラインが下抜けるのを見越してエントリーするようになります。結局、ネックラインを下抜けず、そのまま含み損を抱えるのがオチです。そうならないよう、ヘッドアンドショルダーを活用する時は、ネックラインを下抜けてからエントリーするようにしましょう。そうすれば、無駄なトレードが減る一方で、勝ちトレードが大幅に増えます。
確かに、天井圏でショートするよりも、利幅は小さくなります。しかし、「頭と尻尾はくれてやれ」という相場格言があるように、天底圏は、リアルタイムでは分かるものではなく、後付けで「ここが天底」と分かるものです。
ですから、トレードで長期的に利益を上げたいなら、ヘッドアンドショルダーを見つけたとき、ネックラインをブレイクするまで待ちましょう。上記ABCの戻り局面で、トレンドフォローならネックラインを下抜けたあとにエントリーしても利幅が稼げると分かりますね。ですから、早期エントリーする必要はないということです。
逆張りで使うより、トレンドフォローの戻り局面で使う方がいいのも、利幅が稼げるという理由があるのです。完全な逆張りだと利幅が稼げませんから、早期エントリーしたくなりますよね。
まとめ
ヘッドアンドショルダーは、相場の流れが変わるときに出現するチャートパターンの一つです。シンプルなのに、ひとたび発見できればトレードできます。特に、トレンドフォローでネックラインを引けるようになると、トレードで勝てる感覚が身につきます。
今日から、チャート分析するときは、ぜひヘッドアンドショルダーを意識して見つけてみてください。そして、ネックラインを引き、価格がネックライン付近でどのような反応をするのか、チェックしてください。毎日見ていれば、この記事に書いてあることが納得できるはずです。