世間では、FXのデイトレードやスキャルピングといった「短期売買」で勝ち続けるのは不可能である、という見解が多いです。FPや税理士などお金に詳しい国家資格ホルダーほど、そういう意見が多い気がします。ビジネス作家やエリート会社員など、頭が良さそうな人は短期売買を勧めていません。
また、実業家や(デイトレーダーではない)投資家も、短期売買はパチンコと同じで、博打と同じだと言う風潮もあります。
たしかに、FXの短期売買で大富豪になったという話は聞いたことがありません。数億円の稼ぎなら、たくさんいるでしょう。何百万というFXトレーダーがいれば、そこそこ勝てるトレーダーは、少なからず出てきます。1万人いれば数人は何億か稼ぐでしょう。では、何十億、何百億という利益は無理なのでしょうか。
個人的には、無理だと思っています。その理由は、いくつかあります。
① マイナスサムゲームである
② 価格は成長ではなく循環していること
③ 移り変わりが激しすぎて対応できない
他にもありますが、すぐに思いつくのはこの3つです。
① マイナスサムゲームであること
これは、スプレッドという手数料があるからです。1回のトレードでは微々たるものですが、1か月、1年となると莫大な手数料がかかっています。1万通貨でトレードするとして、1日20回トレードし、スプレッド0.2とすると、1回-20円、1日-400円、1か月-8,000円、1年で-96,000円です。スプレッドはこれ以上閉じることはなく、他の通貨ペアや経済指標、相場急変時は開きますから、もっとかかっています。1年で-10万円とします。1万通貨で-10万円というと、1000pipsです。0.2×4,800回/年=960pipsで、約1,000pipsです。
年初に-1,000pipsからトレードスタートし、年末までに挽回してプラスにしなければなりません。1,000pips勝ってようやくとんとん、ということです。年間のトレード自体がプラマイゼロでも、スプレッドで‐1,000pipsです。これでは勝てないですね。よほど期待値の高いトレードをやらないと利益は出ないことがわかります。
② 価格は循環している
株式は成長しますから、基本は「買い」です。成長するまで長くじっと待つことができます。また、株を買い増し、値上がりするまで何年も持っておくことも可能です。その企業のビジネスモデルがある限り、ホールドしててもメンタルに悪影響が無いのでしょう。期待できるからでしょうか。一方、FXの価格は、成長がありません。通貨の価格は循環しますから、上下を繰り返します。長期トレンドで一方向へ進むことはありますが、株のトレンドとは本質が異なります。一時的なトレンドはあるものの、循環するものに莫大な資金を投入することは、メンタル的に無理でしょう。いずれ反転するとわかっているからです。
③ 移り変わりが激しい
為替市場は、相場変動が激しいです。
短期トレンドも強烈な値幅が出るときありますし、経済指標でどちらに値が飛ぶかわからない世界です。大きなイベントは数日おきにあり、大きなロットでポジションを長く持つのは特別な事情が無い限り、無理と言わざるを得ません。強固な根拠と資金力があれば別ですが、そもそも資金がある人はFXをやらないでしょう。また、②と重複しますが、経済指標やイベントがあっても、成長要素があれば下がっても買い増しできます。しかし、循環しますから、経済指標でがらりとトレンドが転換する可能性があります。
一つの長期トレンドで莫大なロットを張り、資産を築いたというならわかりますが(株でいうひとつの銘柄で資産を築くに近いでしょうか)、トレンドが発生するたびに莫大なロットを張っていると、負ける時があります。そうすると、恐怖心が芽生えます。
また、為替は頻繁にトレンドが発生し、毎回要因が異なるので、一個人が毎回見極めることはできません。相場歴が長くなるほど、FXの難しさがわかってきます。
このように、①のように物理的に不利であることと、メンタルへの影響があります。②や③を理解してくるとメンタルへの影響が強くなります。②や③のメンタルへの影響とは、「リスクがあると認識すること」です。つまり、FXで勝ち続けるのが難しい理由は、リスクを理解してしまうからです。
リスクとは、危険という意味ではなく、変動幅の大きさをいいます。相場変動要因が多岐にわたり、変動幅が大きく、ロットをはると資産変動も大きくなります。言い換えると、よくわからない要因で変動するものに対し、大きなロットを張ることができないわけです。リスク(変動幅)が大きいからです。
ただ、100億円の大富豪になる必要はありません。
数千万や数億円で充分です。それなら、ロットも小さくていいのでメンタルへの負担は少ないです。短期売買で可能です。勝ち負けはあるにせよ、毎日コツコツと利益を積み上げていけばできます。短期トレンドで、期待値のあるトレードは可能ですから、スプレッドを加味しても勝ち続けることは可能と思います。