FXの元手資金が『5000万円ある』と聞くと、どのようなトレードをイメージしますか?
「大きな勝負ができる金額」
「これだけあれば無理しない」
「短期売買で何億も目指す」
「小さくトレードすれば安泰」
様々な意見が出そうです。
5000万円は、私が専業になったときの資産です。リーマンショックで資産を失い、50万円を元手に一からスタートしてわずか2年~3年で到達した金額が5000万円です。その時考えていたことは、「ここまで稼げたのだから1億円なんて通り道。すぐに3億円や5億円にいく」でした。
当時は上場企業に勤めていました。
その企業ブランドを思い残すことなく捨てて退職し、専業トレーダーになる位ですから、相当自信がありました。5000万円あればすぐに1億円を超えられる。しかし、この考えが甘かったのです。
何が甘かったのでしょうか?
それは、トレードで勝ち始めて『気が大きくなる』資産帯だからです。数年という短期間で、こんなに稼げたのは人生で初めて。5000万円という額は、世間一般から見るとそこそこ稼いでいる部類に入ります。嬉しさや、トレードでやっと成功できるという安堵感、いっきに億にいくぞ、という浮ついた気持ちや期待感が混ざり、気が大きくなりトレード内容もスケールが大きくなります。
1億円まであと半分ですから、もう少しで手が届きそうな位置まできています。トレードは上り調子ですから、期待もこめて大きなトレードをし、なるべく早く1億円に到達したい。誰もがこう思うでしょう。
モチベーションが高くなり、発想もトレードも大きくなるのは良いことです。100億円とか稼ぐ起業家は、思考も行動力もスケールが大きいでしょう。トレードも同じです。何億も稼いでいるトレーダーは、スケールが大きいはずです。しかし、5000万円稼いだからと言って、さらに大きなトレードができるとは限りません。同じように損失も大きくなる点は忘れてはいけません。つまり、『資金がなくなる速度も早い』のです。
5000万円くらいになると、ロットもトレード内容も大きなものとなり、損益変動が大きくなります。喜怒哀楽も激しくなり、それまでと違ったプレッシャーを感じたり、トレード内容が悪くなることもあります。また、これまでの実績があるためか自信過剰になりやすい時期です。
しかし、大きなトレードをしていると負けも大きくなります。損切りができずに1回のトレードで大損をこうむると、それまでのモチベーションが急激に低下します。トレードなど冷静にできず、そこからじり貧になって資産が数百万に落ち込み退場する。数千万のトレーダーにありがちなパターンです。
5000万円くらいの資産帯は、こういったトレードに要注意です。調子に乗りやすく、これまで勝ってきたという実績があるので、自信過剰になりがちです。私も専業トレーダーになったころ、5000万円くらいの時期は調子に乗っていたことは確かです。まさに、魔の資産帯といえます。しかし、頭の片隅に、FXの短期売買で「右肩上がりで勝ち続けるのは難しい」という認識があったため、証拠金を頻繁に出し入れしたり、ロットを減らすなどして資金管理してきました。大きく減らすことなく、コツコツと1億円を超えることができました。
全てのトレーダーにとって、5000万円が危険な資産帯ではありません。急激に勝ち始めた時が危ないとお考え下さい。どんなに資産が増えても、『勝って兜の緒を締めよ』ということです。1億でも10億でも、トレードを続ける限り安泰はありません。FXの仕組みは、諸刃の剣であることは忘れてはいけません。そして、誰にも『魔の資産帯』があると認識しておきましょう。ここを乗り越えると、一線を超える気がします。