FXをやっていると、『いずれ専業トレーダーになってトレードだけで生活したい』と考える方は多いと思います。パソコンとスマホがあれば場所にとらわれず仕事ができますし、稼げれば収入は青天井です。夢のような職業に感じるかもしれません。
しかし、職業としての専業トレーダーはメリットがある反面、デメリットもあります。その一つに、『社会的信用力がゼロになること』です。ここでいう信用力とは、お金に関することです。
では、専業トレーダーが信用力をつけるには、どうすればいいのでしょうか? 専業トレーダー14年目の私が気付いたことを5つにまとめました。
1.信用力=お金を借りる力
信用力とは、その人の社会的な信頼度です。お金でいうと、どれだけお金を借り入れることができるか、と言えるでしょう。ローンを組むときやクレジットカードをつくるとき、賃貸住宅を借りるときなど、収入や職業を公にして審査されます。銀行からお金を借りるなら、いくらまで貸してくれるかを考えると分かりやすいでしょう。貸出上限が5000万円なら、あなたの信用力は5000万円です。
つまり、『信用力=お金を借りる力』です。
地位や肩書、実績ではありません。大きく稼げば実績を作ることはできます。SNSを使えば、インフルエンサーや個人投資家といった地位や肩書も得られるかもしれません。しかし、投資界隈で有名だからといって銀行がお金を貸してくれることはないでしょう。
2.専業トレーダーの信用力
専業トレーダーは、投機取引を生業としているため、信用力はゼロに等しいでしょう。ギャンブラーは言い過ぎかもしれませんが、投機取引は無職と同じ見方をされます。ある程度の実績はあったとしても、トレードの収入しかなければ、安定収入とは程遠い職業に見られます。
信用は、安定した収入や勤続、職種などで判断されるでしょう。専業トレーダーになると、それまで後ろ盾になっていた会社のブランドを捨てることになります。社会的信用力の基盤はなくなり、お金を借りる力はゼロに等しくなります。
専業トレーダーになってから住宅ローンを組む、クレジットカードを作るなどの与信審査がある場面では、極めて不利になります。審査が通る可能性は低くなります。借入ができないと、家もキャッシュでしか買えません。人生設計が狂うかもしれませんので、注意が必要です。
3.稼げれば信用力はいらない?
信用力がいらないほどのキャッシュがあればいい、と考えるかもしれません。キャッシュがあれば家も買えます。借入する必要がありませんから、信用力は不要という考え方です。何億、何十億と稼げば、生活に必要なものはキャッシュで全て購入できますね。確かに、現金があれば借入など必要ありませんから、トレードで大きく稼げれば信用力は問題になりません。
また、借入をして大きな買い物はせず、家も生涯賃貸に住む予定なら、信用力は不要です。ですから、専業トレーダーになって信用力が落ちたとしても、生き方によっては全く問題になりません。大切なことは、自分がどのような生活基盤を作りたいかを考えておくことです。信用力が落ちたとしても、困らなければいいわけです。
ちなみに、いくらのキャッシュがあれば、信用力がゼロでも安心できますか? これから仕事しなくても老後破産せず、お金に困らない金額です。これは人によって意見が分かれそうですが、個人的には5億円くらいと考えています。5億円のキャッシュがあれば、生活に必要なものは何でも購入できます。借入をする必要がなく、信用力が無くても生きていけます。ただ、収入がないので一般の賃貸物件を借りることができないとか、収入証明が必要な場面では困りますが。
5億円も必要ないと感じるかもしれません。しかし、専業トレーダーですから、トレードしますよね。証拠金が必要になりますし、当然負けることもあります。ロットも大きくなりますから資産変動が大きくなります。さまざまな投資に手も出すはずです。不安を抱えずに余裕資金でトレードするとなると、1億円や2億円では足りないでしょう。3億円あったとしても、1億円負けたらどうでしょうか? 残り2億円になったとき、生活費を考えると全然足りません。やはり、5億円は必要と思います(かなり個人的な見解です)。
4.信用力を上げるには
上述のように、トレードで稼げれば信用力は必要なく、普通に生活できるでしょう。しかし、忘れてはいけないことがあります。それは、億単位のお金を稼ぐには時間がかかるということです。
数年で何億も稼ぐことは可能ですが、それにはリスクが伴います。極めて大きなリスクを取れば短期間でできるかもしれませんが、普通の人はできないでしょう。数年ではできず、5年や10年かそれ以上という年月がかかるでしょう。その間、専業トレーダーとして信用力がありません。
そこで、稼ぐためにトレードに集中している間、信用力を上げるスキームも構築しておくと良いでしょう。具体的には、次の2つです。
①マイクロ法人を作る
②複数の収入源を作る
①マイクロ法人
法人を作り、法人口座でトレードをします。いわゆるFX法人です。私は、専業トレーダーになる前に法人化し、専業トレーダーになると同時に、法人から自分へ給与という形で毎月支払っています。会社員と同じくらいの給与にしていたので、個人の年収は会社員時代とさほど変わりませんでした。
個人に給与を支払う、というのが信用力を上げる一番のポイントではないかと思います。法人が為替取引で利益を上げ、給与を支払うスキームを何年も持続すれば、法人としての信用力もかなり上がる印象です。実際に、私が不動産投資をスタートしたとき、借入ができました。こういったスキームも審査がおりた要因ではないかと思います。
②複数の収入源を作る
法人を作ると、どんな収入も法人の利益にすることができます。為替取引の利益だけよりも、複数の収入源があったほうが法人は安定します。トレードしながらリスクが少ない収入の仕組みを作ることがおすすめです。それが、複数あればさらに良いです。トレードで莫大なリスクをとっていますから、それ以外はリスクの少ないものにした方がいいでしょう。
ただ、これは理想論です。
専業トレーダーになるのに、トレード以外のことに時間を割けるはずがありません。トレードだけやりたくて専業トレーダーになりますからね。ですから、無理のない範囲でやるべきです。
私の場合は、ブログをはじめました。専業トレーダーになってから1年半くらい経過したとき、リスクのない収入源としてブログが最適と考えました。かりに収益を生まなくても、リスクがゼロですからブログをやっても損失は発生しません。このノーリスクというのがポイントです。また、トレード日記を残すことは自分のためになります。
5.信用力を上げた結果
法人化してある程度の実績ができれば、複数の収入源がなかったとしても与信力は上がってきます。法人で為替取引を行ない、毎月給与を個人に支払うというスキームを5年は継続しました。法人化して決算書、財務諸表はすぐに提出できる状態を作っておくのも大切です。
もちろんトレードで勝てることが前提で、大きな損失が発生した月がありませんでした(トレードで大損しないことが一番大切と実感)。トレードで2000万円前後の利益が出せたのと、ブログ収入も入り始めていたので、法人として赤字の月がなかったです。それを5年できました。そのかいあって、億単位の借り入れができ、不動産投資も開始できました。
専業トレーダーになる前に、信用力がなくなることを見越し行動に移しておいたからです。それが上記2つです。まずは法人化しておく(確定申告は専属の税理士で)。可能ならトレード以外の収入源をなにか作る(微々たる金額だとしても)。それが複数あればなおよいです。
1社借入できれば(1棟買えれば)もうこっちの思うまま。収入源に賃貸収入があると法人のキャッシュフローが安定し、与信力は格段に上がります。2棟目、3棟目と次から次へと借入でき、現在は10億円以上の借入れができています。
6.まとめ
信用力は、お金を借りる力です。借入限度額が1億円なら、その人の信用力が1億円ということです。10億円なら信用力が10億円。金融機関はこのような見方をします(個人的な印象です)。
専業トレーダーがトレードで利益を上げるだけでは、無職のギャンブラーに近い見方をされる可能性が高く、信用力は上がりません。信用力を必要としないレベルまでいくには、最低5億円は必要でしょう。トレードでこれ位稼ぐには時間がかかります。そこで、専業トレーダーになる前後でマイクロ法人を作り、法人でトレードしつつ複数の収入源を得る行動を少しずつしておくのがおすすめです。
大切なことは、専業トレーダーになったらどんな生活が待っているのか想定しておくこと。与信力に対して今から何ができるのか、どんな対策をしておくべきかなど、よく考えることです。ここで書いたことは私の体験の一つでしかありませんから、専業トレーダーになる計画がある人は、勢いで本業を辞めるのではなく、対策をしてから行動するのがおすすめです。